事例

事例作成日:2020/03/26
更新日:2020/03/26

質問

(309)ひきこもりは男性に焦点が当たりがちですが、女性の実態はどうですか?男女の内容に差がありますか?また、統計があれば教えてください。

カテゴリ

04. 性・心・からだ・健康06. 社会09. 世帯・家族

ヒアリングのポイント

レポート作成や研究のためか、当事者または支援者として問題解決に役立てたいのかなど、質問者の立場や目的を確認する。

参考資料・情報源

・自館所蔵資料データベース
・国立女性教育会館情報ポータル“Winet”「文献情報データベース」
・インターネット

提供情報・回答

ひきこもりは社会的課題として報道や出版物も多く見られ、行政や民間の支援機関も全国的に設置されている。しかしながら、事件を発端とした報道が多いためか、「ひきこもり=男性」という偏ったイメージは否めない。内閣府の「生活状況に関する調査」によると男性が約7割、女性が約3割という結果だが、支援担当者は女性のひきこもりは潜在しているという。(2016調査:男性63.3%・女性36.7%、2018調査:男性76.6%・女性23.4%)
表面に現れにくい原因として「ひきこもりの定義」が未確定であることがまず挙げられる。男性が就労せず家にいるのはひきこもりで、女性は家事育児やその手伝いとして表面に現れないというジェンダー要因も指摘されている。実際に内閣府の『生活状況に関する調査報告書』(平成31年)では、現在、専業主婦・主夫、家事手伝いの人や、きっかけが妊娠、介護・看護である人(計47人)を広義のひきこもりから外しているが、家族以外の人との会話状況などからその内の11人は該当者であることがわかる。もう一つの理由として、女性のひきこもりのきっかけが「性被害」であるケースが少なくないため外部に相談しにくく、表面に現れにくいという指摘もある。
統計上に現れにくいことは支援体制にも影響しており、全国で実施されている支援プログラムや集いの場が男性に偏っていて、女性のひきこもり者は救われる場がないという現実がある。
以上のことから、女性に特化した調査・研究・支援が急がれていると言える。

ここでは、数多くあるひきこもり関連の資料から、女性のひきこもりについてわかりやすい情報を提供する。
注:調査では性別が男女の選択のみのため、性的マイノリティの実態はさらに見えにくくなっている。

◆図書
・斎藤環『社会的ひきこもり(改訂版)』PHP研究所、2020
・ひきこもりUX会議編『女性のひきこもり・生きづらさについての実態調査2017報告書』ひきこもりUX会議、2018
・ひきこもりUX会議編『ひきこもり女性たちのUX(ユニーク・エクスペリエンス):実態調査から見えてきたこと:シリーズわたしたちの生存戦略』2018
・ひきこもりUX会議編『ひきこもり女子会:シリーズわたしたちの生存戦略』ひきこもりUX会議、2017
・池上正樹『ひきこもる女性たち(ベスト新書;510)』KKベストセラーズ、2016
・飯島裕子『ルポ貧困女子(岩波新書;新赤版1621)』岩波書店、2016

◆雑誌記事
・林恭子「女性特有の生きづらさを考える:「ひきこもりUX女子会」の取り組み」『月刊自治研』722、p.44-49、2019.11
・加藤順子「ザ・インサイダー 中高年世代で「61万人超」判明 内閣府調査が見落とした女性ひきこもりの無念:私たちは透明人間じゃない!」『サンデー毎日』98巻25号、p.16-19、2019.5.19
・林恭子[述]「「ひとりではない」と感じられる居場所:ひきこもり女子会をあちこちでつくろう:お話林恭子さん」『くらしと教育をつなぐWe』28-1、2019.4
・中原一歩「既婚女性も「ひきこもり」:「ひきこもりUX会議」が女性のひきこもり全国調査を実施」『AERA』31巻11号、p.71、2018.3.5
・前村よう子「中年期を迎えたひきこもり:支え亡き後の生活を考える」『女性ライフサイクル研究』22、p.61-67、2012.11
・「薬を飲みながら家事 夫の言いなり「奴隷のよう」 見えない「ひきこもり主婦」たち」『週刊朝日』120(4)、p.134-137、2015.1.30

◆新聞記事
・川口敦子「取材考記:ひきこもり女子会:生きづらさ語り合う女性たち」『朝日新聞』2019.8.29
・黒田菜緒「ひきこもりUX女子会」県内初開催:女性だけで語る「生きづらさ」:思い共有 前向きな生き方摸索へ」『愛媛新聞』2019.03.29
・小国綾子「あした元気になあれ:ひきこもりママ会」『毎日新聞』2019.2.26
・栾暁雨「ひきこもり女子会から一歩:孤立する広島の当事者語り合う集い:女子会開催のUX会議代表理事 林恭子さんに聞く 「独りじゃない」思えることが力:生きづらさ共有し共感」『中国新聞』2018.11.17

◆調査報告書
・内閣府『生活状況に関する調査報告書』2019.3、2020.3.19アクセス、
 https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/life/h30/pdf-index.html
・内閣府『若者の生活に関する調査報告書』2016.9、2020.3.19アクセス、
 https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/h27/pdf-index.html
・内閣府『若者の意識に関する調査(ひきこもりに関する実態調査)報告書』2010.7、2020.3.19アクセス、
 https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/pdf_index.html
・財団法人横浜男女共同参画推進協会『若年女性無業者の自立支援に向けた生活状況報告書』
2009.37、2020.3.19アクセス、
 https://www.women.city.yokohama.jp/wp-content/uploads/2019/02/tyousa_houkoku.pdf

◆インターネット
・『ひきこもり対策推進事業』厚生労働省、2020.2.7アクセス、
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html
 *全国の地域支援センターの設置状況を掲示
・『一般社団法人ひきこもりUX会議』、2020.2.7アクセス、
 https://uxkaigi.jp/
 *ひきこもりUX女子会・DAY CAMP・ママ会・セクマイ会などを全国で開催中

その他、全国の女性関連施設では、必要に応じて相談室や子ども・若者応援センター、ハローワーク、保健福祉センターなどにつないでいる。また、就労支援も行っている。

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