事例

事例作成日:2012/11/09
更新日:2012/11/09

質問

(234)<STOP 人身取引>というポスターを見ましたが、日本には取り締まる法律があるのでしょうか。

カテゴリ

05. 政治・政策・法律07. 労働・社会保障

ヒアリングのポイント

法律の有無がわかればよいのか、どのような法律なのか、法律の成立過程等も知りたいのかなどを尋ねる。

参考資料・情報源

・電子政府の総合窓口(e-Gov(イーガブ))
・国立女性教育会館女性情報ポータル”Winet”「文献情報データベース」「女性情報ナビゲーション」
・国立情報学研究所「CiNii Articles」
・自館所蔵資料データベース
・インターネット

提供情報・回答

◆法律を調べる
 法律を調べるには「電子政府の総合窓口(e-Gov(イーガブ))」に「法令検索」がある。2012.11.2アクセス、
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/strsearch.cgi
○「法令用語検索」で「人身取引」で検索すると、法律としては「出入国管理及び難民認定法」がヒットし、第五条七の二で人身取引等を行い、唆し、又はこれを助けた者は入国ができないことがわかる。
○同様に「人身売買」で検索すると、以下の法律がヒットする。
・「刑法」(第二百二十四条ー第二百二十九条に「略取、誘拐及び人身売買の罪」がある。)
・「刑事訴訟法」
・「出入国管理及び難民認定法」
・「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」
・「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」
・「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」

 さらに「電子政府の総合窓口(e-Gov(イーガブ))」の「行政機関等ホームページ検索」を「人身取引」で検索すると、以下がヒットする。
2012.11.2アクセス、
「日本における人身取引対策の現状と課題」『国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 485』国立国会図書館、2005.6

※関連部分は以下のとおり。
 2 日本における人身取引対策
 「現行法上「人身取引」行為を禁止し、処罰する規定が存在しない。現行法で、それに該当すると考えられるのは、刑法第224条等の略取誘拐罪、児童買春等禁止法違反、「出入国管理及び難民認定法」第73条第2項の不法就労助長罪、労働基準法違反、職業安定法違反、風適法違反、売春防止法違反等である。」
 「2004年(平成16年)4月5日、人身取引の防止・撲滅と被害者の保護に向け、<中略>「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」が設置された。<中略>連絡会議は、同年12月7日、「人身取引対策行動計画」を策定した。」
 「政府は、この「行動計画」に基づき、第162回国会に人身取引議定書の締結の承認を求めるとともに、「刑法等の一部を改正する法律案」(閣法第52号。以下「刑法等改正案」という。)及び「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」(閣法第46号。以下「風適法改正案」という。)を提出した。刑法等改正案の内容は、人身売買罪の新設等人身取引を処罰するための刑法の改正のほか、人身取引の被害者保護及び人身取引・密入国の防止のための入管法の改正、組織的な逮捕・監禁罪の法定刑の引き上げや人身取引による犯罪収益の資金洗浄等の処罰を目的とした「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(平成11年法律第136号)の改正である。」

◆関連資料を調べる
 関連資料を調べるには、「文献情報データベース」、「CiNii Articles」、自館所蔵資料データベースを「人身取引 法律」(人身取引and法律、「文献情報データベース」では「人身取引」と「人身売買」が同義語でもれなく検索することが可能)で検索する。以下のような資料がヒットする。

【雑誌記事・論文】
・佐々木光明「人身売買罪の検討([日本刑法学会第84回大会]ワークショップ)」『刑法雑誌』46(3)、p.427-430, 2007.4
・安部雄太「人身売買に関する法制度:タイと日本の現状と課題」『大学院論集』17,p.74-91、2007
・林陽子「ジェンダー法学会シンポジウム 1:人身売買防止法:立法の展望」『ジェンダーと法』2、p.1-3、2005.7
・吉田容子「人身売買に対する日本の法整備の現状と課題」『国際人権ひろば』No.63、2005.9
*PDFでも提供されている、2012.11.1アクセス、
 http://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section2/2005/09/post-191.html
※「2005年6月に刑法の一部改正案が成立し、略取誘拐罪の処罰対象の拡大と法定刑の加重、人身売買罪の新設などがなされた(同年7月12日施行)。これにより国連人身売買防止議定書が定める「人身売買」の全てが処罰対象となった。」

【図書】
・『人身取引(トラフィッキング)問題について知る 2011』国立女性教育会館、2011
*PDFで提供されている。2012.11.2アクセス、
 http://www.nwec.jp/jp/publish/report/page35.html
※参考資料「6) 匿名通報ダイヤルの対象事犯」に関連法令がまとめられている。
・山根共行、村下博編『現代社会と人権(第3版)』大阪経済法科大学出版部、2006
*本田稔「人身売買を根絶する力と法の役割」所収
・日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会編集『人身売買受入大国ニッポンの責任:被害者保護支援の施策と被害者保護:シンポジウム基調報告書』日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会、2005
・JNATIP編『人身売買をなくすために:受入大国日本の課題』明石書店、2004

◆インターネット
 人身取引に関する政府サイトや関連団体サイトは「女性情報ナビゲーション」のカテゴリー「社会問題・社会活動>人身売買」にまとめられている。2012.11.2アクセス、
 http://winet.nwec.jp/navi/modules/weblinks/viewcat.php?cid=51

コメント

 日本は、強制労働や性的搾取のために売買される女性や子どもの目的地となっている。米国国務省は、世界の人身売買の実態や政府による対策をまとめた「人身売買報告書」を、2001年以来毎年発表している。2012年の報告書(186カ国・地域)は日本について、「政府は努力をしているものの、人身売買撤廃のための最低基準を満たしていない」としている。(下記参照。2012.11.2アクセス、)
・「米国務省、世界186カ国・地域の「2012年人身売買報告書」を発表」『一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター』
 http://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2012/06/1862012.html

参考事例
(226)性犯罪加害者に対する最近の政策や取組について知りたいのですが。
(187)性被害を受けた人を支援する情報にどのようなものがあるのか知りたいのですが。
(103)最近「トラフィッキング」という言葉をみかけました。アジアから来た女性などが関係しているようです。強制売春やDVとの関連など詳しいことを知りたいのですが。

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