「できないといわない」をモットーに~派遣社員/簿記・パソコン講師 佐藤啓美さん~

「できないといわない」をモットーに~派遣社員/簿記・パソコン講師 佐藤啓美さん~
<プロフィール>
一般事務をおこなう派遣社員であり、かつ簿記・パソコン講師。短大卒業後、事務職として働きましたが、夫の転勤で退職。約14年間専業主婦として過ごしますが、県主催のワープロ講座に通ったことをきっかけに派遣社員として再就職。パソコンと経理の資格を取得しながら、職場でも経験をつみ、現在二つの仕事をフレキシブルに両立しています。(40代)
佐藤啓美さんのこれまでと
生涯学習との関わり
短大在学中に簿記3級、秘書検定の資格を取得。卒業後、会計処理をおこなう会社に就職。
2年半勤務し、社内結婚を機に退職。夫の転勤先である長野に転居。
長野で7年暮らした後、高崎で7年、埼玉で1年と、夫の転勤による転居が続く中、3人の子どもを育てる。
福島に転居。子育ての山場を越え、再就職を考える。1995年、県主催の「女性就業支援ワープロ講座」を受講。
講座修了後、派遣社員の募集に応募。採用されて、4ヶ月間、入力作業をおこなう。
職業安定所で仕事を探し、浄化槽の工事をおこなっている会社に、正社員の事務職として就職。約2年半勤務。
人材派遣会社に登録し、経理・会計処理の仕事を続ける。その間、独学で日商簿記2級を取得。さらに、通信教育で勉強してパソコン検定を取得。
人材派遣会社で、パソコンを教える仕事を依頼されるようになる。
会社の仕事とは別に、個人でもパソコン講師の仕事を開始。しかし、限界を感じ、パソコン教室に勤めて1年3ヶ月講師を務める。
人材派遣会社の紹介で、2001年より、県の男女共生センターで簿記3級受験講座の講師を務める。
仕事をすることへのこだわり

佐藤さんは現在、派遣社員として、簿記やパソコンの講師、そして事務職(主に経理など)の仕事をしています。講師と事務職というと一見、全く別のものに見えますが、佐藤さんの中では有機的に結びついています。
そんな佐藤さんの原点は「とにかく仕事をしていくこと」という強い思い。そのために努力した結果、講師と事務職という複数の仕事に対応できるようになりました。
佐藤さんは、高校生のころから、一般的な主婦ではなく、何か仕事をもちたいと思ってきました。積極的な活動を評価する教師に囲まれ、さまざまな課外活動を経験する中で、「働くのはおもしろい」と思ったといいます。
その後、仕事に直結するように就職率の一番よい短大の秘書科に進学。在学中に簿記3級と秘書検定の資格を取得しました。短大卒業後は会計の計算処理を行っている会社に採用され、2年半勤務したところで社内結婚。夫の転勤先である長野に転居するため、退職しました。

再就職へのきっかけ

長野県へ移り住んだ佐藤さんは、その後も転勤による引っ越しを繰り返しました。長野には7年間住み、その後高崎で7年間、埼玉で1年間、そして現在福島に住んで約10年になります。この間、3人の息子を育てました。家庭での生活を優先させましたが、高崎と埼玉にいるときは、3年ほど通信教育の添削の仕事をしました。
福島に移ってきて、仕事もなく、子どもも大きくなっていた佐藤さんは、外に出て働くことを考え始めました。そこで準備のため、県主催の女性就業支援ワープロ講座に通うことにしました。年齢は30代半ばを過ぎていました。
ワープロ講座は毎日5時間、1ヶ月の講座でした。久しぶりの機械操作や新しい知識を得る新鮮さに加えて、講師の人柄もよく、受講生には就職を目指している同年代の女性が集まっていて、「やるぞ」という雰囲気がみんなにあり、非常に楽しかったといいます。
講座終了後、新聞の折込広告にでていた派遣社員で入力を行う仕事に応募。20人の枠の中に採用されました。時給は1000円前後で、福島での時給としては悪くない額でした。最初に3ヶ月働いた後、20人の中から佐藤さんも含めて4,5名が再び呼ばれ、さらにもう1ヶ月働くことになりました。

正社員として再就職

派遣期間を終えた佐藤さんは、職業安定所で職を探し、浄化槽の工事をおこなっている会社に正社員の事務職として就職しました。ワープロを打てること、経理事務ができること、が採用の条件で、佐藤さんにちょうど合う条件でした。募集年齢の上限も、佐藤さんの年齢より1つ下でした。
仕事は、経理や多額の集金、電話番まで、なんでもこなしました。その間、会社からの業務命令で、建設業経理事務士2級を取得。給与も年収200万円を超え、居心地のいい職場でしたが、会社の経営が悪化し、約2年半勤めて退社しました。

資格取得と仕事

退職後、人材派遣会社に登録し、経理・会計処理のできる派遣社員として働き始めました。また、40代に入ったこともあり、経理とパソコンが両方できれば、事務職に応募するときに有利になるだろうと考え、日商簿記2級を独学で、パソコン検定を通信教育で勉強して取得しました。
資格を取ったことは仕事を得る上で効果をもたらしました。人材派遣会社では、パソコン教室の副講師の仕事や、一対一で生徒を教えるパソコン講師の仕事が入るようになりました。また、この派遣会社から派遣する社員にもパソコンを教えるよう、依頼されました。
「個人でもやれる」と思った佐藤さんは、パソコンがある知人の事務所を借りて個人に教えたり、出向いて教えたりするようになりました。知人の口コミで生徒が増え、多いときで20名ほど教えました。また、事業所単位で教えることもありました。
一方、「うつくしま未来博」にパソコンのデータ処理のために派遣されたときには、今までにないデータ処理を経験して力不足を自覚。「これではいけない」と思い、MOUS(Microsoft Office User Specialist、現:Microsoft Office Specialist)の検定を取得しました。
その後、個人で教えるのにやや限界を感じていた佐藤さんは、福島に開業するパソコン教室の講師に応募しました。このときMOUSの資格を持っていたのは佐藤さんだけ。無事採用されて、1年3ヶ月、パソコン塾で教えました。
その後、教室の仕事と入れ替わるようにして、派遣会社からの仕事で、福島県男女共生センターで簿記3級受験講座の講師を務め始めました。相手の立場にたってわかりやすく話ができる佐藤さんの力を見込んでの依頼で、この仕事は現在も続いています。

年齢制限を突破して

佐藤さんの強みは、経験をもとに資格を取得し、その資格をもとに仕事を広げていったことです。また、パソコンだけ、経理だけというのではなく、経理とパソコン両方の資格を組み合わせていったことが、キャリアを展開する上での強みになっています。
40代半ばとなった佐藤さんは、派遣社員の仲間の中では、ほぼ最年長だそうです。世の中の多くの会社が若い人の採用を好む中で、佐藤さんは、経理の経験と、インストラクターをするほどのパソコンの実力を評価され、途切れることなく仕事を続けてきました。派遣先の職場で出会う人の中には、40代の佐藤さんがパソコンのスキルに長け、データ処理を得意とすることを意外に思う人もいるそうです。佐藤さんは、パソコンと経理の資格という組み合わせの妙によって、こうした周囲の思い込みを乗り越えていきました。
佐藤さんがキャリアを形成していく上で心がけてきたことのひとつは、「できないといわないこと」。これは、小さな会社に事務職として勤めていた時期に、社長から教わったことです。この方針は、現在の派遣社員の仕事でも変わりません。そんな佐藤さん、これからも資格と経験の2つの車輪をうまく使って、その時々の自分に一番あったキャリアをつくっていくことでしょう。

(平成15年度インタビュー、平成17年度修正)

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