専業主婦という女性の生き方をテーマに研究を続ける~石崎裕子さん

専業主婦という女性の生き方をテーマに研究を続ける~石崎裕子さん
<プロフィール>
日本女子大学人間社会学部現代社会学科卒業。日本女子大学大学院人間社会研究科現代社会論専攻博士課程後期単位取得退学。日本女子大学人間社会学部現代社会学科非常勤助手となる。その後、NHK学園高校専攻科の非常勤講師も兼任。2004年『国立女性教育会館研究紀要』第8号に論文が掲載される。母親の介護の後、2006年日本女子大学人間社会学部現代社会学科助手(常勤)となる。現在、日本女子大学人間社会学部現代社会学科助教(常勤)。(30代)
石崎裕子さんのこれまでと
生涯学習との関わり
日本女子大学人間社会学部現代社会学科に入学。
日本女子大学大学院へ進学。
研究がおもしろくなり博士課程後期に進学。
日本女子大学人間社会学部現代社会学科非常勤助手となる。その後、NHK学園高校専攻科の非常勤講師も兼任。
『国立女性教育会館研究紀要』第8号に論文掲載。
母親の介護
日本女子大学人間社会学部現代社会学科助手(常勤)。
日本女子大学人間社会学部現代社会学科助教(常勤)。
自由闊達な女子校時代

  石崎さんは、オイルショックの年1973年に生まれました。両親と二歳違いの妹と共に、埼玉県所沢市で育ち、県内屈指の伝統校、川越女子高校へ進みました。自立した女性として、社会の様々な分野で活躍する多くの卒業生の存在は、生徒たちにとって、まさにロールモデルでした。また先生からも「これからは女性の時代だ」ということを言われ、女性の生き方に興味を持つようになりました。そしてこのようなことを学ぶにはどんな学部、学科へ行けばいいのか調べていく中で、社会学を知り、社会学が学べる大学を受験しました。
  入学したのは日本女子大。女子高での楽しい経験から女子大学に進むことに抵抗感はまったくなかったそうです。課外活動では、混声合唱のサークルに入りました。他大学の男子学生も所属する合唱団の活動は、女子大生活とは違った雰囲気で新鮮でした。女子高時代は力仕事でもなんでも自分たちでやっていたのが、男性が混ざると「危ないから、僕たちがやるよ」と女性が守られたり、サブの立場になったりすることを実感。「世の中にはこういう部分もあるのだ」と改めて知りました。

研究者の道へ

  卒業後は、社会学で試験が受けられることから考えていた家庭裁判所調査官補の試験を受けますが、狭き門で不合格。2年間勉強して再度チャレンジしようと、大学院修士課程に進学しました。ところがセックスレス・カップルについて修士論文を書いているうちに面白くなり、1998年博士課程へと進み、研究を続けていくことにしました。博士課程では、現在に続くテーマ、若い世代の専業主婦志向について研究を始めます。1998年版『厚生白書』で紹介された「新・専業主婦志向」は、「男は仕事と家事、女は家事と趣味(的仕事)」という新たな性別役割分業意識に基づいた20、30代の女性を中心とした専業主婦志向ですが、1995年に創刊された『VERY』という雑誌は、まさにその30代専業主婦をターゲットとしています。石崎さんはその雑誌に出会い、なぜ女性はせっかく手に入れた仕事を辞め、専業主婦になるんだろうという疑問を持ち、それを追求することにしたのです。2001年3月、博士課程を単位取得退学し、同年4月より、所属学科の非常勤助手となりました。その後、日本女子大学の同窓会「桜楓会」の人材銀行の紹介で、通信制のNHK学園高校専攻科の非常勤講師の仕事も得ます。
  非常勤とはいえ、大学での職を得たことで、仕事と研究の両立がしやすくなりました。その仕事をしながら論文を書き、2004年8月『国立女性教育会館研究紀要』(当時)第8号に、投稿論文「女性雑誌『VERY』にみる幸福な専業主婦像」が掲載されました。

社会とのかかわりを考えさせられた母の病気と介護

  研究生活が順調に進むかのように見えたその年の11月、母親が脳出血で倒れました。幸い病状は比較的軽かったのですが、それからしばらくは、母親の介護で研究からは遠のきました。仕事は続けられるかと不安になり、研究ができない焦りもありました。しかし、母親の看病やリハビリをきっかけにいろんなことが見えてきました。市のリハビリ教室の「家族の日」という集いなどでいろいろな人と接して、地域にかかわるということがどういうことか、身をもってわかった石崎さんは、少しでもできることをと、病院の音楽ボランティアをするようになりました。外来診療の終わった夕方のロビーで、一月に1回程度、ピアノ演奏をしています。

新たな気持ちで目標を持って

  研究にはブランクができてしまいましたが、研究紀要に掲載された論文を展開して、その後は着実に進めています。『VERY』の論文の成果をもとに研究計画を立てて、2006年には、日本女子大学の同窓会「桜楓会」の奨学金を得て、2008年3月「女性雑誌『STORY』にみる専業主婦像」という論文にまとめることができました。その他、日本女子大学教員奨励金や、2008年度の日本私立学校振興・共済事業団より若手研究者奨励金として、学術研究振興資金を交付される機会に恵まれたのは、国立女性教育会館研究紀要に論文が掲載されたことがもととなっており、研究紀要が査読つきだったということもあり、影響はとても大きかったということです。また、インターネットで公開されていて、思いがけない方に読まれていて驚くこともあるそうです。
  現在は雑誌『主婦の友』の研究を進めています。今の石崎さんの目標は、研究をまとめて博士論文を書き上げることです。そして、経済的な自立。「10代の頃から、ずっと経済的な自立をしたいと思ってきたけれど、研究職を見つける難しさも痛感している」そうです。「助教の職には任期があるので、いい形で次につなげたい」といいながら、やはり不安はあります。「ただ、とにかく今は、一つ一つの積み重ねを大切に、どんなことにも積極的に取り組んでいきたい」という石崎さんの言葉は、母親の闘病を支えた経験から来る強さでしょう。


◆石崎裕子さん掲載論文

「女性雑誌『VERY』にみる幸福な専業主婦像」
『国立女性教育会館研究紀要』第8号

(平成20年度インタビュー)

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