コツコツと積み上げてこそのキャリア~公務員 飯尾聡子さん

コツコツと積み上げてこそのキャリア~公務員 飯尾聡子さん
<プロフィール>
高校を卒業後、公務員試験を受けて県職員として就職。県下の統計データにかかわる仕事や、経理、パスポート発行、秘書などの仕事を務めてきました。現在は熊本県男女共同参画センターの職員として、女性のための講座の運営、情報提供、相談など、男女共同参画社会づくりにかかわるさまざまな事業に携わっています。
飯尾聡子さんのこれまでと
生涯学習との関わり
高校時代、公務員志望者向けの講座を受講したことをきっかけに、公務員を目指すようになる。
卒業後、公務員試験を受験するが、失敗。1年間、受験勉強に打ち込む。
試験に合格し、県職員に採用される。県庁の統計調査課で、県内の基礎データにふれる。
地域振興局へ移動となり、県職員のための庶務とパスポート発行業務を担当。
本庁に移り、秘書を務める。管理職と職員の連携づくりが仕事のポイントであることをつかむ。
男女共同参画センターに異動。女性と社会との関わりという視点から、改めて自分の生活を見直すきっかけを得る。
コツコツと積み上げてこそのキャリア~公務員 飯尾聡子さん
熊本県の男女共同参画センターの職員として

  「安定」した仕事のイメージを代表する「公務員」。実は多種多様な仕事を含み、地味ながら毎日の積み重ねが求められる仕事でもあります。飯尾さんは、どんな仕事でもまっすぐに努力を重ねることで、自分の人生を豊かに広げながらキャリアを形成し、公務員生活10年を迎えました。
  現在の職場は男女共同参画センター。熊本市の賑やかな街なかで、NPO・ボランティア協働センター、しごと相談・支援センター、生涯学習推進センター等とともに、くまもと県民交流館パレアの中に置かれています。飯尾さんはそこで、男女共同参画社会をめざした啓発活動、人材育成、情報提供や調査研究、女性総合相談、団体活動・交流支援などに携わり、忙しくも充実した毎日を過ごしています。

いきなりの再チャレンジを経験して

  天草に生まれた飯尾さんは、海と山に囲まれ、自然の恵みを存分に受けながら成長しました。電気店を営む父母と弟の4人家族。修理の仕事に出かける父親についてゆき、一生懸命働く姿を傍らでみているうちに、「自然と働くのは当たり前だと思っていたので、何か生涯にわたって職につきたいなと思って」いました。
  中学時代は保育士になりたいとも考えましたが、進学した地元の高校で公務員志望者向けの講座があり、それをきっかけに、公務員を志望。地元の就職口はもともと少なく、県の職員になることを目指しました。受験のことは家族にも友人にも相談せずに決めました。
  「自分がいいと思ったものにしか進んでいかないようにしないと、失敗したときや躓いたときとかに、絶対私は人のせいにしてしまうと思うんですよね。だから、選択するときには絶対自分でしようというのはありました。」
  ところが、1年目の受験で失敗。キャリア作りの出発点は浪人生活から始まりました。「どうしよう、どうしたらいいのだろう」と不安におそわれる中、合格という目標に向けて今の自分にできることは何かと考えました。「後で思い出して、あのときの自分は嫌だったなと思いたくない。」その気持ちを支えに、ひたすら勉強に打ち込みました。
  その間、両親は何も言わずに支えてくれました。応援してそっと支えてくれる両親に感謝しながら、猛勉強。その甲斐あって、1年後、念願の県職員として採用されました。

仕事も自分を鍛えてくれ、次のステップの肥やしとなる

  最初の職場は県庁の統計調査課。ここでは、県の人口や産業などあらゆる基礎的なデータに触れることができ、公務員として仕事をしていくうえで貴重な財産を得ました。県の実態を数字で語れるのは強みだし、県内の人々の暮らしぶりを細かく把握できることは、公務員として重要な力です。
  3年後、天草の地域振興局へ。県職員のための庶務とパスポート発行業務を担当し、3年間勤めました。もともと人と話すことが好きだったので、楽しい経験になったといいます。
  さらにその先は本庁での秘書。秘書の仕事というと、まず「女性らしい気遣いや心配り」といったものが考えられがちですが、飯尾さんによれば、それは仕事の一面にすぎず、重要なのは「部長(管理職)と職員の間をどうつないでいくか」だといいます。秘書の役割は、管理職と職員との連携をスムーズにし信頼関係を強めること。そのために最もよい方法で事務をとること。「それはなんかこう、コーヒーをどうぞ、という気遣いではなくて、一番仕事の能率を上げるために、私は何ができるだろうっていうことが一番重要なのかなと思いますね。」
  当時、秘書は女性ばかりでしたが、特に気にもしませんでした。現在は、男性秘書が2名おり、県の体制も変わってきています。

「不思議」を解明できる男女共同参画センターの仕事

  そして現在の職場である男女共同参画センター。それまで、女性に対する期待や世間のあり方についてあまり強く意識してこなかった飯尾さんにとって、男女共同参画社会づくりの仕事は、自分の生き方や社会について別の見方を知るきっかけとなりました。
  自分が子どもの頃、女の子だけが家事を手伝わされたこと。秘書の仕事は女性ばかりだったこと。そうしたばらばらの経験の根っこにある仕組みについて理解し、考え方に1つの軸ができました。将来の子育ては、男女にこだわりなく育てたい。家庭では、パートナーと家事や子育てを担い合って、できれば自然とふれあえるような環境で、生活を共同で作り上げてゆきたい。結婚や子育てに対する考えも明確になりました。
  飯尾さんは、社会の仕組みや歴史などの学びを、「仕事」としてこなすだけでなく、1人の女性として取り組み、自分の生活に応用していきました。

さまざまな人との交流が自分を支えてくれる

  忙しい毎日ですが、手話やお茶のサークルを始め、友人との交流や趣味のためには積極的に時間を使います。仕事で行き詰ったときには、こうしたさまざまな分野の友人がよき相談相手。職場の上司や同僚、高校時代の友人たちも含め、いわば県全体が友人知人の宝庫になりつつあります。
  最後に、これから職業に就く後輩たちへ、飯尾さんからのアドバイスです。
  (1)公務員という職業は、公共性があり、県民の方と接する機会も多いため、やりがいがあります。一生働き続けたいと思う人や、異動の多さが苦にならない人、また、事務だけでなく専門職もあるので、いろいろな世界を見ることが好きな人にも向いています。
  (2)「きついな」と思ったときは、将来の自分を考えてみてください。その困難が過ぎた後の自分や、10年後20年後の自分を想像して、今どういう風にしたら、後でふりかえったときに後悔しないかを考えること。
  (3)いろいろな分野でたくさん友人を作ってください。自分と違った視点からアドバイスをもらい、考えるときの選択肢をふやすことができます。仕事で行き詰まったときの息抜きにもなります。

  熊本地方では、一生懸命がんばることを「がまだす」というそうです。コツコツ努力を重ねる飯尾さんも、じっくりと粘り強く生きる熊本の女性——「がまだす女」の1人にちがいありません。

(平成17年度インタビュー、平成19年度掲載)
 

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