地域のニーズにあった福祉NPO~自営業と地域活動の経験をいかす~須田弘子さん

地域のニーズにあった福祉NPO~自営業と地域活動の経験をいかす~須田弘子さん
<プロフィール>
「まごころサービス福島センター」理事長。福島市で夫と自営業を営みながら、高齢者ケアの地域活動を開始。福祉をしっかり勉強しようと、短大保育科の夜間部に通い、卒業後、仲間と「まごころサービス福島センター」を設立しました。高齢者・障害者のケアや訪問介護員の養成など、地域に密着した福祉サービスをおこなっています。(60代)
須田弘子さんのこれまでと
生涯学習との関わり
高校卒業後、おじの会社で経理を務め、結婚を機に退社。
夫の転勤で福島市に転居。
夫が独立し、電気通信工事業を開業。子育てをしながら、専務として会社経営に携わる。
地元に根づくため、町内会、婦人会など地域活動に熱心に参加。
婦人会活動の中で特別養護老人ホームでボランティアをし、福祉について学びたいと思い始める。
近所の短大夜間部の保育科に社会人入学。3年間学ぶ。
卒業後、学んだことを生かす方法を模索。「日本ケアシステム協会」の活動を知り、40代半ばで仲間と「まごころサービス福島センター」を設立。
1999年、活動をNPO法人化。
短大(昼間部)の福祉専攻に1年間通い、介護福祉士の資格を取得。
地域のニーズにあった福祉NPO~自営業と地域活動の経験をいかす~須田弘子さん
「まごころサービス福島センター」の活動

須田さんが理事長を務める「まごころサービス福島センター」は、福島市内および伊達郡で、地域に密着した福祉サービスを提供するNPO法人です。法人化は、介護保険導入を機におこないました。
主な活動としては、地域で日常生活に困っている人を対象とする「訪問介護サービス」があります。サービス時間は、月〜土曜日の9時〜5時まで。簡単な日常生活の支援から障害者の介護まで、幅広く対応しています。そのほかにも、「ミニ・デイサービス」「子育て支援サービス」「よろず介護相談」など、地域に密着し、利用者のニーズをきめ細かく満たすサービスを、数多く提供しています。
また、こうしたサービス以外では、ヘルパーの育成と同時に、ボランティアのプロを育てるために「訪問介護員養成研修」(福島県指定)を開催。他団体の講座に比べて充実した内容が、目をひきます。
さらに、目下進行中(2004年インタビュー当時)の大プロジェクトとして、新拠点のオープンが予定されています。2300坪の土地と建物(ゲストハウス)を月5万円で10年間借りられることになり、ここを拠点に、自分たちだけでなく、色々な社会資源と連携して福祉の広場を作りたいという須田さん。すでに住民とのワークショップを3回開催し、準備に余念がありません。

自営業をしながら地域活動へ

神奈川県・横須賀市生まれ。戦争で宮城県に疎開し、小中高と過ごしました。卒業後、東京のおじの会社で経理を務め、21歳で結婚退職。夫の仕事先である仙台市に移り、さらに転勤で福島市へ転居しました。
やがて福島市で夫が独立し、自営の電気通信工事業をスタート。3人の子どもを育てながら、書類上は専務として、会社の経営にも携わりました。
自営業として地元に根づくためには、地域の人とうまくやっていかなければとの思いから、地域活動に熱心に参加。もともと世話好きなこともあり、夫の代わりに町内会の会合に出たことがきっかけで、町内会、婦人会、子ども会などさまざまな仕事を引き受けるようになりました。婦人会では、地域の福祉活動に携わり、会長も務めました。こうした活動のおかげで、自然と地域の全体像が頭に入り、その後の活動の下地ができたといいます。

短大夜間部で保育を学ぶ

婦人会活動の一貫として、特別養護老人ホームでボランティアをするようになった頃、あることに気づいて衝撃を受けました。それは、多くの高齢者が、どちらかといえば、世話する人の気持ちを優先しているということです。
これをきっかけに福祉について真剣に考えるようになり、福祉をしっかり勉強しようと奮起。高校受験を控えた次男と一緒に勉強に励み、自宅から近い短大の夜間部の保育科に、社会人入学しました。こうして、昼間は家で働き、夜になると学校に通う生活を、3年間続けました。
卒業すると、学んだことを社会で活かすために、具体的な方法を探し始めました。婦人会の地域活動に限界も感じていました。そんなとき、新聞で「日本ケアシステム協会」が、時間貯蓄のポイント制による福祉サービスの全国ネット(7ヶ所)を展開しているという記事を発見。「これだ」と思い、婦人会の仲間3人に声をかけ、4人で「まごころサービス福島センター」を立ち上げました。46歳のときのことでした。

地域のニーズを汲んで活動を展開

「まごころサービス福島センター」の当面の拠点は、自宅の4畳半の部屋。資金もなければ、本格的な活動拠点もなかなか見つからず、まさに何もない状態からのスタートでした。
ところが、始まって1年も経たないうちに、設立メンバーが全員脱退。サービスを向上させるためには、自営業の経験を活かして、何としても事業化したいと考えていた須田さんと、今できる範囲に留めたい他のメンバーとで、意見が対立してしまったからです。
それでも彼女はあきらめませんでした。このシステムが人から求められているという実感があったし、学んできたことを何とか社会で活かしたかったからです。「これは必要だという信念で乗り切ったようなもの」だったといいます。
その後、新しい協力者を得て活動は続き、家事介護サービスから始めて、地域の利用者のニーズに応じる形で、少しずつ新しいサービスを追加していきました。
たとえば、家事援助サービスや配食サービスを始めたきっかけは、「当方高齢世帯、食事の支度をしてくれるお手伝いさん求む」という広告でした。応募してみようという須田さんに、「そんなの営業じゃないか」という声もありました。しかし、料理の得意なメンバーを頼りにやってみたところ、結果は好評で、心臓病や糖尿病に配慮した食事を毎日作ることになりました。やがて、評判を聞きつけた人からの依頼も多くなり、仕事の幅は広がっていきました。
2005年には新しい活動拠点がオープン。高齢者に限らず、障害者(児)や子育て支援など、何らかの援助を必要とする人を広く受け入れる地域密着型の介護施設として、機能的に柔軟に、365日24時間体制で取り組んでいます。

学んでそれを社会に還元していく

必要に応じて学び、自営業や地域活動の経験も活かしながら、学んだことを社会に還元していくというのが、須田さんのやり方です。NPOを始めてからも、介護福祉士の資格をとるため、1年間、前と同じ短大の福祉専攻(昼間部)に通学。さらなる学習を欠かしません。また、ドメスティック・バオイレンスの女性支援パートナーを担当していることから、高齢者のDV問題への取り組みに向けて、もっと学びたいとも考えています。さらに、次代の福祉NPOの担い手育成にも力を入れたいとのこと。
大きな困難にぶつかりながらも、決してあきらめず、常に先を見つめて行動してきた須田さん。「できないと思っていたことができるようになっていく瞬間がたまらない。」そんな彼女が、新しい拠点をもとに、どんな活動を展開していくのか、大いに楽しみです。

(平成16年度インタビュー、平成18年度修正)

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