「金持ち人生」ならぬ、「人持ち人生」を~表現ボランティア 星川叔子さん~

「金持ち人生」ならぬ、「人持ち人生」を~表現ボランティア 星川叔子さん~
<プロフィール>
「まいまい塾ネットワーキング」というボランティアグループの代表をつとめ、朗読や紙芝居など、「語り」を中心にしたボランティア活動を行っています。地域の婦人会を立ち上げ、そこからできた人間関係を中心に活動の範囲を広げていきました。(60代)
星川叔子さんのこれまでと
生涯学習との関わり
高校卒業後、NHKの放送劇団に入団。劇団活動の合間に、洋裁学校で2年間学び、師範科を卒業。
愛媛県の実家に戻り、家業を手伝う。結婚と同時に香川県に転居。
出産を機に、子育てと地域活動中心の生活に入る。また、洋裁の内職を始める。
子育てが一段落したところで、地域に婦人会(太田南婦人友の会)を立ち上げる。国立女性教育会館のエンパワーメント講座を2、3度受講。
通信講座で、日本レクリエーション協会公認の余暇生活開発士の資格取得講座を受講。資格を取得し、NHK文化センターで「自己再発見講座」の講師を9年間務める。
市の社会教育課長から誘われて、文部省の助成金をもとに、NHKとの提携による「朗読ボランティア講座」を企画・実施。表現ボランティアの出発点に立つ。
講座修了後、有志とともに「朗読研究会あめんぼ」を立ち上げる。
「太田南婦人友の会」と県内の7つの団体とでネットワークを組み、「まいまい塾ネットワーキング」を結成。文部省の事業に、人権朗読劇の企画で応募し、受託に成功(1993年)。表現ボランティアの活動を現在も継続。
大学の法学部に、社会人入学。2003年に卒業。
「金持ち人生」ならぬ、「人持ち人生」を~表現ボランティア 星川叔子さん~
表現ボランティアという活動

明るくて元気な人、しかも人まで明るくする、そんな星川さんの特技は、朗読と紙芝居で鍛えた「しゃべりの技術」です。「紙芝居表現で、50人の子どもと1時間楽しく過ごすことができます。100人いても、2時間遊ばせることもできますからね。身体1つでね」。
星川さんは、朗読や紙芝居による表現ボランティア活動を中心とするグループ「まいまい塾ネットワーキング」の代表を務めています。定期的な活動は、地元香川県の県立図書館や市立図書館で月1回ずつ。その他、依頼を受けて、学校で総合学習の授業を受け持ったり、市役所で子育てや男女共同参画などに関わる朗読や紙芝居をしたりすることもあります。活動の費用は原則として参加者の自己負担です。

幼少期から自身の子育てまで

星川さんは、旧満州の大連市で生まれました。父親は海運業を営んでおり、たいへん裕福な環境で育ちました。その後、一家は終戦を機に日本に引き揚げ、愛媛県の川之江市(現・四国中央市)に移り住みました。
やがて高校を卒業した星川さんは、実家を離れて松山に移り、NHKの放送劇団に入団。その後、芸能界をめざして何度か上京したり、劇団活動の合間を利用して、2年間松山の洋裁学校に通い、師範科を卒業したりしましたが、最終的には実家に戻って家業を手伝うようになりました。
24歳で結婚。と同時に、現在の拠点である香川県高松市に移り住み、翌年、一人娘を出産。基本的には主婦としての生活をしつつ、ときには娘を連れて講演を聞きに出かけたり、洋裁の内職をして家計の足しにしたりしていました。県庁の公務員である夫の当時の給料が月3万円の時代に、内職で月1万円ほどになったといいます。子どもが小学校に入ると、PTA活動にも積極的に参加しました。

「朗読」との出会いから、「まいまい塾ネットワーキング」の結成まで

子どもが小学校を卒業して子育てが一段落した頃、地域に婦人会がまだなかったことと、公民館に新しく来た館長の勧めもあって、自ら「太田南婦人友の会」を立ち上げました。
また当時、朝鮮戦争になぞらえて「女の38度線」説(女性も38歳で何をするかによってその後の人生が決まるといった主旨)が一部で提唱されていました。「ただ子育てと夫に三つ指ついてお帰りなさいだけではいけない」というような話を聞いた星川さんは、37歳の自分をふりかえり、家庭の外に出て活動しようと考えていました。
文部省から面白い事業に対して20万円の予算をつけるという話が高松市に来たのは、そんな頃でした。当時の市の社会教育課長は、さまざまな活動をしていた星川さんに声をかけました。星川さんは、一緒に企画を考え、予算獲得に成功。NHKと提携した「朗読ボランティア講座」の実現にこぎつけました。
この講座は、朗読ボランティアを養成する12回の講座で、ここでの学びが、星川さんが朗読と出会い、表現ボランティアを始める出発点となりました。星川さんは企画者であると同時に、受講者としても参加。さらに修了後、自主的な学習グループとして「朗読研究会あめんぼ」を結成。この「あめんぼ」の活動は、今も続いています。
「太田南婦人友の会」と「朗読研究会あめんぼ」という2つの活動を同時に進めていた星川さん。女性の社会参加支援特別推進事業という文部省の事業があることを知り、県の推薦を受けて、「あめんぼ」で人権朗読劇をやろうと企画しました。ところが、いざ応募する段になってメンバーの意見が割れ、応募は取りやめになってしまいました。
そこで星川さんは、「太田南婦人友の会」にこの企画を持ち込みました。しかし、ただの婦人会では面白みが無く、採用されないと思い、県内の7つの団体とネットワークを組んで、新たに「まいまい塾ネットワーキング」を結成。7人の発起人による企画として応募し、受託に成功しました。

学習講座の活用方法

星川さんは、活動をしながら、さまざまな学習講座も利用しています。まず、1980年頃、地域の婦人会の代表として国立女性教育会館(当時は国立婦人教育会館)のエンパワーメント講座を2、3度受講。3泊4日の泊りがけで、テーマを決めて学習し、レポートを出すという講座で、1つのテーマについてじっくり考え、知的好奇心を満たすいい機会になったそうです。
また、通信講座で、日本レクリエーション協会公認の余暇生活開発士の資格取得講座を受講。以前からやっていたレクリエーションインストラクターの一段上の資格で、自分で余暇開発のイベントを企画運営できることなどが魅力でした。教材費は約10万円。星川さんはこの資格の第1期生で、資格取得をきっかけに、地元高松市のNHK文化センターで、「自己再発見講座」という講座の講師を約9年間にわたって務めました。
さらに、社会人入試で大学を受験し、法学部に合格。2003年3月に卒業しました。大学入学のきっかけは、裁判所の調停委員をしていたときに知り合った大学教員からの勧めでした。夜間コースで、授業料は年間24万円。一般の学生の半分です。色々な人生経験をしてから入学したおかげで、かえって授業内容にリアリティを感じて「倍、楽しめた」といいます。こうしたさまざまな学びの経験は、「お話おばさん」、「紙芝居おばさん」としての、人権紙芝居の制作や啓発運動に活かされています。
星川さんの人生のモットーは「笑顔の数だけこの指とまれ」であり、金持ち人生ではなく「人持ち人生」です。実際、星川さんの人生は人とのつながりが非常に強く、深く、広く、自分が何かをしたいと思っているときに、うまく人から声をかけてもらうことで新しい展開に至っています。「人持ち人生」とは、人との出会いを大切にし、自分の財産とする、星川さんらしい表現ではないでしょうか。

(平成15年度インタビュー、平成17年度修正)

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