親が主体の子育てサークルから企業や行政と協働したまちづくりへ~岡本光子さん

親が主体の子育てサークルから企業や行政と協働したまちづくりへ~岡本光子さん
<プロフィール>
大学卒業後、金融会社に総合職として7年間勤務。同僚と結婚。管理職も経験するが体調不良のため退職。子どもが4ヵ月の時に多摩市に引っ越し、市主催の「すくすく学級」に参加。知り合った仲間と子育てサークル「親子のひろばわくわく」結成、月1回子育てひろばを開く。その後、市が募集した子育て便利帳作成の市民参画メンバーに参加し、保育つきの講座等を企画運営する任意団体「Seeds」を結成。2006年に「NPO法人シーズネットワーク」とし、企業等と連携した子育てひろば「多摩センター子育てファミリーステーションcoucou」の運営や、2自治体共同のアンテナショップの委託運営等、「子育て支援」「女性の社会参画支援」「まちづくり」を3つの柱とする活動を広げている。(40代)
岡本さんのこれまで
1990年 大学卒業後、金融会社に総合職として入社
1995年 会社の同僚と結婚
1997年 管理職として働くが体調不良のため退職
1998年 第1子誕生
1999年 多摩市に転入。「親子のひろばわくわく」を結成、親子が集まる場を月1回提供
2000年 任意団体「Seeds」結成。保育つきの親のための講座や、親子で集う「Seedsひろば」等を実施
2002年 個人事務所「シーフルプラニング」創業(イベント請負、マーケティング等)(2007年廃業)
2006年 法人格を取得し「NPO法人シーズネットワーク」となる
「多摩センター子育てファミリーステーションcoucou」共同運営開始
2010年 多摩市と友好都市長野県富士見市町の共同アンテナショップ「ポンテ」を開店
親が主体の子育てサークルから企業や行政と協働したまちづくりへ~岡本光子さん
転居先での子育ての煮詰まり感をきっかけに地域活動を開始

  1990年に大学を卒業後、総合職として金融会社に7年間勤務しました。5年目に同僚と結婚し、大阪への単身赴任もしましたが、体調不良のため退職しました。
  1998年に第1子が誕生。4ヵ月の時に、夫の転勤のため都心から多摩市に引っ越しました。知り合いの全くいない土地での子育てに「煮詰まり感」を感じ、市が実施する母親と乳児が集まる「すくすく学級」に参加しました。そこで友だちをつくりたいと声をかけて親しくなり、仲間5名で子育てサークル「親子のひろばわくわく」を始めました。駅前に保育室のある新しい公民館ができ、登録すると部屋を無料で使用できたため、月1回保育室を借り、チラシをつくり、だれでも来ることができる現在の子育てひろばのように公開にしました。これが岡本さんの地域活動の第一歩でした。
  この活動をしながら、公民館や女性センターの子連れで参加できる講座や保育つきの講座にも参加しました。市が作成する子育て便利帳の市民参画メンバーの募集に参加、ここで現在のNPO法人の理事のうち2名と知り会います。子どもを連れていても親が自分のやりたいことを話し合ったり企画したりできる「親主体のサークル」をつくろうということになり、2000年に任意団体「Seeds」を結成しました。自分たちが知りたいと思うことや興味ある職業に就いている人等の話をきいたり、自分の振り返りを行う等、保育のついた親向けの講座を企画し、参加者を募って「Seedsひろば」を実施しました。

子育てひろば運営の声がかかりNPO法人を設立

  活動を行ううち、NPOについて関心を持ち、その頃市内に新しくできたNPOセンターに行ってみました。訪れた際、事務局のアルバイトを勧められ、NPOセンターで働けば、NPOのこともわかり、ネットワークも広がると思って引き受けました。週2、3日の出勤日は、子どもは認可保育園の一時保育に預け、有償ボランティアの事務局スタッフとして働き始めました。またその頃、知り合いの有限会社社長から、フリーペーパーの取材やモニタリングの斡旋等の単発の仕事を受けるようになり、個人事務所「シーフルプラニング」を設立しました。
  地域での活動や仕事を続けネットワークが広がるうちに、地元企業から、子育てひろばを運営しないかと声がかかりました。この企業は多摩センター駅前ビルのオーナーで、7階に子育てひろばをつくり、子ども連れの親世代や祖父母世代が無料で利用できる施設に人を集めることで、下の階の利用も「シャワー効果」で増加させることをねらったものでした。とてもうれしい話だったので、企画書を作り、具体化させました。社会的信用を考慮して「Seeds」を任意団体から法人化し、「NPO法人シーズネットワーク」としました。地元で古くからあるNPO法人多摩子ども劇場との共同運営として「多摩センター子育てファミリーステーション共同運営委員会」を設置し、出資等を行う複数企業を含めた「多摩センター百貨店ビル子育てひろば運営協議会」が主催、多摩商工会議所と多摩市が後援という体制で、2006年から「多摩センター子育てファミリーステーションcoucou(クク)」の運営を開始しました(2011年3月閉鎖)。現在、ひろばは年間約2万人、1日あたり80〜100名の利用者でにぎわっています。

女性の社会参画支援

  シーズネットワークの約40名の会員は「アクティブメンバー」とよんでいます。メンバーは「coucou」のスタッフとして、あるいはネットワークが実施する講座やイベントの運営スタッフ、チラシ作成、依頼のあった仕事等、単発で随時発生する仕事に対して、希望者が有償で請け負うというしくみで、子育て中の女性でも無理なく社会とつながりをもつきっかけづくりをしています。
  子育て中の母親の支援として、「coucou」の休館日(月・火)に施設を利用して「Seedsおしゃべりひろば」や講師を招いた「Seedsサロン」を実施したり、「子育て中もなにかしたい、と集まったママたちによるプロジェクト」として「Beans(ビーンズ)プロジェクト」を立ち上げて当事者が話し合う機会を提供しています。
  岡本さんは「シーズネットワークって、アイドリングしてよいところ」と言います。完全な専業主婦ではなく、有償で活動することで自信もつき、少しずつでも社会とつながって、やがて次のステップに進むというような環境を提供することが必要と考えています。アクティブメンバーとして「シーズネットワーク」にかかわる女性の中には、「coucou」のスタッフを経験した後、保育園でパートタイムの仕事を始めたり、活動後に他の場所で働き始める人もたくさんいます。
  岡本さん自身、企業に再就職して子育てと両立させることは無理だと考えています。子育て中に何かしたいと模索した頃には、再就職でもパートタイムでもない新しい働き方を考えていました。子どもの病気や学校の行事を優先でき、無理なく子育てと仕事を両立できる環境をつくることをめざした結果としてNPO法人を運営し、そこで働く個々人の希望に合わせた働き方ができる形を重視してきました。自分でもかなり満足できるライフ/ワークスタイルを選択できていると感じています。

企業とのつながりから活動をひろげまちづくり事業へ

  子育てひろばを企業と共同で主催していることで、地元企業とのつながりがさらに広がりました。
  2010年7月には、市の永山駅に、多摩市と友好都市の長野県富士見町の共同アンテナショップ「ポンテ」を、オープンしました。これは「coucou」が入っているビルを所有している企業が永山駅の商業施設も所有しており、空き店舗利用のまちの活性化につながる事業にチャレンジしてはと声をかけられたことから始まりました。富士見町には個人的につながりもあり、企画を提案し、双方に業務委託を持ちかけて実現させました。店舗の運営にあっては、正社員1名とパートタイム従業員10名、計11名の女性を雇用しました。岡本さんの7年間総合職として働き、管理職として部下も持った経験が、企業と連携する時にも物おじすることなくつながり、金銭面等の交渉をする時等の強みにもなっています。
  人的ネットワークを活かし、次々に活動を広げていますが、「シーズネットワーク」の事業をこれ以上大きくすることには限界も感じています。メンバー一人ひとりの望む働き方を大切にすることを重視しているために、活動への関わり方には温度差があります。事業を効率よく割り切って広げていくには、別の組織をつくる必要があるのではと考え、次のステップの模索を始めているところです。岡本さん自身は、子どもが翌年から中学生になるため、もう少し仕事に力を入れることができる環境になることもあります。その時々のライフステージに応じて希望する働き方を追求する姿は、社会参画を望む女性たちのロールモデルともなるでしょう。

(平成22年度インタビュー、平成24年度追記し掲載)

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