結婚後 市原市の商工会議所に勤務・仕事に没頭
1946年山口県で生まれ、書道教師をしていた父親からこれからは手に職をもたないと社会に通用しないとよく言われました。高校卒業後は専門学校で簿記などの勉強を一生懸命しました。
結婚により市原市に転居し、1969年23歳で商工会議所に勤め始め、タイプ打ちからの職業生活がスタートしました。商工会は25人程度の組織で、女性は6、7人と少数でした。組織としては係長に女性が1名いましたが、それ以上の役職はおらず、女性は上に上がれないのかと疑問をもったこともありました。しかし、仕事で様々なことを行う機会を得て、大いに鍛えられました。
当時の専務理事からプロジェクトのスタッフとなるよう言われ、期待された仕事に一生懸命取り組むことで、仕事の幅をひろげ、自分の能力を伸ばしました。市や県の行政関連の人々と交流をもち、人的なネットワークもひろがりました。周囲からも仕事ができると評価され、自身も積極的に仕事に取り組みました。研修を受け、経営指導員の資格を取得したのもこの時期です。その後総務係長を務め、事業主との中小企業相談や苦情処理も担当し、次第に商工会議所において重要なメンバーとなっていきました。1995年からは、総務省行政相談員という重要な役割も果たしています。
管理職となり、男女によらない新たな組織作りに取り組む
子育ては、同居している義母が中心となり行ってくれました。夫は、最初は職業生活の継続に反対でしたが、家事や育児に協力するようになりました。家族がみな協力して仕事の継続を可能にし、2人目の子どもの時は育児休業をとりましたが、義母が家事・育児を行ってくれたので仕事に没頭できました。周囲の女性たちからは、家族の協力があり羨ましい、とよく言われました。
商工会議所の会頭、副会頭につぐ管理職である専務理事に1996年50歳で就任しました。女性の専務理事は全国初でした。商工会における女性の役職者が少ない中で、羽鳥さんの専務理事就任は女性の管理職進出にとって大きな前進といえる出来事でした。仕事の幅はひろがり、運営、会計も含めてすべてのことを任されました。主に男性である事業主と経営に関わる相談も行い、時には暴力団対応などが必要とされることもありました。
自らが管理職となることで、組織のあり方を見直すことにも取り組みました。男女の別は関係なく、責任の重さ、きちんと意識的に仕事を行うことを基本とし、女性の昇進も可能としていく組織改革を行いました。県内の20の商工会の女性たちの勉強会などを実施し、横のつながりを作り、女性たちのエンパワーメントにつながる活動も積極的に展開しました。商工会議所で働く女性たちのエンパワーメントに大きな力を発揮する一方、専務理事の立場で様々な人と出会うことから、大きな力をもらっています。
退職後、条例づくり、センターづくりなど地域活動へ参加
商工会での職業キャリアの継続、管理職として集団をまとめ動かす経験、行政、地域の人々との関わりから、退職後は男女共同参画社会づくりの重要メンバーとしての活躍が増えていきました。当時はじまった男女共同参画条例づくりでは、市から審議会メンバーへの要請があり、委員会副委員長を務めました。委員会や多様な勉強会などで議論を重ね、市原市男女共同参画条例を策定し、2005年4月から施行となりました。それまで市原市では男女共同参画にかかわる市民の活動拠点がなかったため、条例づくりに関わった市民の女性たちが集まり、男女共同参画センターをつくることを市長に要望しました。この活動は2006年4月、市民活動センター「iほっと」の2階に男女共同参画センター設置へとつながり、活動の拠点が誕生しました。
「男女共同参画をすすめる市民の会」の活動へ
条例や行動計画が策定され男女共同参画センターもオープンしましたが、市民との交流は充分とはいえませんでした。千葉県内の団体と連携も深めるなど輪を広げることが必要なことから、センターを活用して活動を行ったのが「市原市男女共同参画を進める市民の会」です。2006年4月に24名で設立総会を開催しました。羽鳥さんはこの会の会長として、活発に活動をおこなっています。
2008年5月には、市民の会設立記念事業として横浜市男女共同参画センターを視察し、11月には千葉県内の館山地域との交流会を開催。その後、市民企画講座、市原市市民男女共同参画フォーラム、千葉県ネットワーク会議への参加など、交流の推進に努めています。
男女共同参画の事業や運営をすすめるにあたっては、ボランティアグループなどは個人的な行動をとることもあり、調整などに難しい面も多くありました。また行政との連携や話し合いの必要も強く感じ、行政も市民も生かされお互いに意味のある関係をもてるよう心がけました。さらに、楽しいことがないと活動の継続が難しくなるので、みんなでアイディアを出して工夫をするなど、活動の推進に向けて様々な取り組みを展開しています。
(平成22年度インタビュー、平成24年度掲載)