「高専」で物質工学を学び、企業の技術職へ~藤川恵理子さん

「高専」で物質工学を学び、企業の技術職へ~藤川恵理子さん
<プロフィール>
パイオニア株式会社部品技術部電気部品課解析係。東京生まれ。中学2年生のときたまたま高校見学会で高専を見学。環境やバイオに興味をもち、化学の勉強ができる国立東京工業高等専門学校物質工学科に進学しました。卒業後、パイオニア株式会社に入社して、現在カーナビなどの不具合の解析をしています。(20代)
藤川恵理子さんのこれまで
中学2年生のとき、高校見学会で国立東京工業高等専門学校を見学し、「高専」の存在をはじめて知る。
中学3年生のとき、テレビで「ロボコン」を見て高専を思い出す。興味のある「化学」について勉強できることを知り、高専進学を決める。
推薦入学で国立東京工業高等専門学校に入学。物質工学を専攻。
高専を卒業し、パイオニア(株)に入社。
「高専」で物質工学を学び、企業の技術職へ~藤川恵理子さん
「高専」との出合い

  中学2年生のときに、学校で高校見学会という企画があり、藤川さんはたまたまくじ引きで「高専」見学のグループに入りました。それが進学することになった「国立東京工業高等専門学校」との出会いでした。もちろんそのときまで「高専」という名前すら知りませんでした。
  中学3年生になり、高校は「せっかく自分の意志で選べるのだから、人と違うことをやってみたい」という思いがあり、何となく「普通科」には抵抗を感じていました。また母親が合成洗剤や農薬といった環境問題に深い関心をもっていた影響で、藤川さん自身も環境問題や化学に興味をもち、農業高校や工業高校も視野に入れて考えていたそうです。ちょうどそのころテレビで「ロボコン(ロボットコンテスト)」を見て、「そうだ高専があった」と思い出し、あらためて調べてみたところ、高専では興味のある環境や化学の勉強ができることがわかりました。その上、自分の実力よりもちょっと上なので、勉強の励みにもなると考え、高専進学を決めました。中学3年の夏のことです。それからの藤川さんは高専への推薦基準である内申「4.0」をとるために必死に勉強しました。とくに苦手だった数学はそれまでの「3」から「4」へ成績をあげました。このとき、努力しなければならない時期が誰にでもあり、そして「やってやれないことはない」と思ったそうです。努力のかいあって見事に合格。中学生の同級生で「高専」に進んだのは藤川さん一人でした。

国立東京工業高等専門学校での学生生活

  国立東京工業高等専門学校は八王子にあります。「高専」の修学年数は5年。卒業後の進路は進学と就職が半々で、大学に進学がだんだん増えているそうです。学生数は一学年200人で一クラスは40人。機械工学、電気工学、電子工学、情報工学、物質工学の5つの学科があります。バイオや環境といった化学分野に興味があった藤川さんは、物質工学を専攻しました。当時の女子の人数は、機械工学科に1人、電気工学科と電子工学科に約3人、情報工学科と物質工学科にそれぞれ約10人で計30人程度でした。女子が少ないことにとくに違和感はありませんでした。
  高専では1、2年生で普通科目を履修し、3年生からは専門科目が多くなります。高専は大学のように単位認定制で、落とすと留年ということになりますが、藤川さんは苦手の数学で、やはりつまずいてしまいました。でも苦手意識を克服するべくもうやるしかないというような感じで、先輩やいろいろな人に助けてもらいながら頑張り、頑張ればできる、という実感を得たそうです。
  専門分野の化学は、無機化学、有機化学、物理化学、分析化学、化学工学など細かく分かれますが、藤川さんは環境分野に興味があったため、4年進級時に化学工学の研究室に入りました。研究室では卒論のための研究をします。藤川さんの卒論のテーマは「循環ボイラーの焼却灰の将来化」。石炭を燃やした灰のリサイクルについてですが、ただ焼却灰をリサイクルするのではなくより付加価値の高いものをつくりあげることを研究したそうです。
  そして5年生になり、卒業後の進路を考えたとき、それまでは漠然と大学進学を考えていた藤川さんですが、もっと研究を続けたいかと考えたときそうではないことに気付き、就職することにしました。そして先生から話のあったパイオニアに入ることになります。

不具合解析の仕事に従事

  パイオニアは、音響製品をはじめとする様々な製品を世へ送り出している会社です。藤川さんが在籍している拠点では、カーナビゲーション、カーオーディオを製造しています。藤川さんはカーナビゲーションやカーオーディオ等の製品が製造工程、車に搭載されお客様に渡った後、故障や不具合が起きた場合に、その原因を各種解析機器を用いて調査する業務に従事しています。
  業務の一例としてはこのようなことです。CDやDVDが再生出来なくなった製品が届き、観察してみると、内部に粘性のある液体が確認できました。そしてFT−IR(赤外分光分析装置)でその成分を調査した結果、ジュース等の飲料である事が分かりました。この様に不具合の原因を見つける事が主な業務だそうです。また不具合に対して、再発防止に繋がるアドバイスを心掛けているということです。特に、製造工程で起こった不具合はその場での迅速な対応が必要なため、よりスピーディな解析が要求されており、限られた時間で正確な情報を回答するという苦労があるそうです。
  不具合解析の仕事は、「分らないところに挑んでいく」、「自分の調査した内容が、品質を高める手助けになる」という点で、藤川さんはやりがいを感じています。そして色々な側面から調査をして、原因を見つけ出すというところで、謎解きが好きな人にはお勧めの仕事だということです。

「あせらないで、自分のやりたいことを見つける」

  藤川さんは中学から高校進学の時に自分の「やりたいこと」を見つけ、その後の進路を決定しました。それについて藤川さんは「自分はたまたま早い時期に進路を決めたけれども、誰もが若いうちに「やりたいこと」を見つけられるわけではないと思う」と言います。そして進路選択に迷う人には「いろいろなことをやってみることが大事だと思います。そしてやりたいことや将来の方向を決める時期は人それぞれ違うと思うので、もし周りの人が進路を決めていってしまったとしても、自分が遅れていると感じてあせることはない。可能性はいっぱいあるので、いろいろなことに挑戦しながら、自分らしさを見失わずに、「やりたいこと」を見つけていってほしい」とメッセージをもらいました。

(平成18年度インタビュー)

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