住宅を作る~お客さまの気持ちに立って現場とつなぐ~長瀬真里子さん

住宅を作る~お客さまの気持ちに立って現場とつなぐ~長瀬真里子さん
<プロフィール>
(株)長瀬建設建築部課長。宮崎県都城市生まれ。福岡工業専門学校卒。福岡市の住宅メーカーに2年間勤めた後、二級建築士を取得し、父の経営する長瀬建設に入社しました。その後インテリアコーディネーター、一級施工管理技師の資格も取得。現在一級建築士を目指して勉強しています。(20代)
長瀬真里子さんのこれまで
中学時代はバレーボールに熱中し、普通高校・大学に行こうと思っていたが、中学2年生のとき、母の自立した女の人にという言葉で設計士を薦められたことから、工業高校の建築科に行くことを決める。
都城工業高校の建築科に進学。
福岡市の工業専門学校に入学。2年間、CADやコンピュータを学ぶ。
専門学校卒業後、福岡の住宅メーカーに就職。業務部に配属になる。
2年後に住宅メーカー退社。2級建築士試験に合格。長瀬建設に就職する。
インテリアコーディネーターの資格を取得
27歳、課長に昇格。
29歳、新しい賃貸マンション・住宅「3156(サイコロ)ハウス」を開発。一級施工管理技師に合格。
現在、1級建築士目指して勉強中。
住宅を作る~お客さまの気持ちに立って現場とつなぐ~長瀬真里子さん
新しいプロジェクトに奔走する毎日

  長瀬さんは現在、父の経営する都城市の建設会社で、住宅開発、設計、施工管理の仕事をしています。最近では「3156(サイコロ)ハウス」という賃貸マンションや住宅を開発するプロジェクトを手がけています。3156ハウスは、サイコロをモチーフに、コンクリートの美しさと木のしなやかさとを組み合わせた、新しいライフスタイルにアピールする住宅です。長瀬さんは、お客さんと話したり、直接現場に出て大工さんと話したり、チラシやプレゼンテーション資料を作ったりなど、工夫を凝らして新しい提案を楽しんでいます。

福岡での葛藤、現在の会社に就職するまで

  長瀬建設は大規模コンクリート工事でたくさんの実績をもつ建設会社で、長瀬さんはその建築部門で働いています。長瀬さんがこの会社に就職したのは専門学校を卒業して2年後の、22歳のときでした。
  小さい頃から家業である建設現場に親しんではいましたが、長瀬さんは漠然と普通校に行って大学に行ってと思っていました。中学2年生で高校を決めるときに、母に相談すると、女性は結婚したり子どもを生んだりということがあるけれど、自立した女の人にならなければという話をされ、手に職をつけなさいということで建築士とかはどうかと薦められます。そこで長瀬さんは、工業高校の建築科に行くことを決心しました。もちろん家を見るといった住宅関係のことにすごく興味があったこと、そして結婚して子どももほしいと思っていた長瀬さんは、建築士は家でも仕事ができるということも考えたそうです。
  願い通り工業高校の建築科に進学しましたが、卒業時に就職を探すと就職難で、さらに福岡の工業専門学校に進みました。そして就職難は続いていたのですが、たまたま受けた集団面接で福岡の住宅メーカーに入社することができました。
  その会社で配属になったのは、設計部ではなく業務部でした。業務部での主な仕事は、建築の調査や申請に必要な書類の作成、設計部の人が作成した図面の清書などでした。設計の仕事がしたい、と言ったところ、若いうちは設計の仕事はできないと言われ、この会社では自分のやりたい仕事ができないのではないか、と思うようになりました。そこで2年後の二級建築士の受験を機に、会社を辞めることにしました。
  そして無事二級建築士に受かった後、父と兄が長瀬建設で働くように熱心に薦めにくるようになりました。しかし社長の娘だといわれるのがいやだった長瀬さんは、最初は帰るつもりがなかったそうです。そのとき兄に、「それは言われて当然のこと、言われて、はいはいと、そのまま「娘です」という感じでいるのではなくて、自分に実力をつけて頑張ればいいじゃないか。したい仕事ができるというのは一番分かっているだろう。」と、言われたのです。その言葉が後押しし、長瀬さんは父の会社に入社します。

努力で積み上げた7年間

  そうは言っても時代は不景気で就職難のまっただ中。就職して、周囲の第一声は「お帰りなさい」、「就職先がすぐに見つかってよかったね」、という言葉でした。そのような中で、長瀬さんは兄の言葉通り、自分に実力をつけていきます。
  二級建築士取得後、長瀬さんは一級建築士の資格取得を目指しています。しかし一級建築士には実務経験がいるので、その間にインテリアコーディネーターや一級施工管理技師の資格を取得しました。現在、夜間と日曜日の週3日を資格取得のための勉強の時間にあてているそうです。
  そして、建築物というのはお客さんにとって大きな買い物なので、最終的にはお客さまの気持ちになって、ということをいつも心がけているそうです。そのために、大工さんや業者さんが思うように動いてくれないときには、一回であきらめてしまわないで、何度も「あれは、どうなったんですか」とか、「どうにか、これでお願いします」など粘り強く言っているそうです。そして、大工さんより早く工事現場に行き、寒いときには温かい飲み物を用意しておいたり、世間話をして一緒にお茶を飲んだりといったことをして、信頼関係を築いてきました。
  長瀬さんが仕事をしていてよかったと思うのは、設計のときお客さんと意見が合うこと、また最初意見が合わなくても、建て終わったときに「ありがとう。あなたに頼んでよかった」と言われ感謝されること。そんなとき、つらかったことは吹き飛んでしまうそうです。
  現在の仕事は、営業から設計、施工の管理など、幅広くこなさないといけない大変さはありますが、福岡時代と比べると格段にやりがいがあります。そしてそういう仕事にチャレンジさせてくれる親に本当に感謝しているといいます。

自分のやりたいことを見つけて、そして周りの人を大切に。

  中高生の皆さんには「まずは趣味などささいなことでもよいから、自分のやりたいことをもってほしい、そして目標を持って進んでほしい。もうこれは駄目だから止めた、と思わず、目指したことでの喜びを知った時に、多分初めてそのやっていたことの価値が分かるのではないでしょうか。そして支えてくれる、自分の周りの人、家族や友達を大切に。」というメッセージをいただきました。これは理系をめざす人ばかりでなく、すべての中高生に向けた大切なメッセージではないかと思います。

(平成18年度インタビュー)

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