中学の進路指導で獣医学部のある大学の附属高校へ進学
遠井さんは小さい頃から動物が好きで、いつのころからか「獣医さんになりたい」と思っていました。
中学の進路相談のとき、担任の先生に「獣医さんになりたい」と言ったところ、「獣医学部のある麻布大学に附属高校がある。そこなら推薦で入れると思うから、そこに進学するといい」と言われました。その先生の一言が遠井さんの将来の進路を決定したといえます。
先生の言葉通り、麻布大学附属渕野辺高等学校に進学。家から高校までは1時間半以上かかりましたが、友人たちも遠距離通学だったため、特に遠いとは感じませんでした。
高校は共学で、1学年は約150人。男女比はやや女子のほうが多かったそうです。高校入学当初は約半数が獣医学部を希望しますが、最終的に附属大学に進学するのは40人から50人、他学科に進む人もいるので、獣医学科に進むのは6人から8人程度です。
高校2年から理系、文系に分かれましたが、遠井さんは獣医学科を希望していたので理系に在籍しました。獣医学科への進学は成績順に決まります。このため高校時代はつねにトップクラスの成績をキープしていました。最終的に獣医学科を希望した人は14、5人で、その中から推薦試験で8人が進学しました。男女は半々でした。
獣医学科とは
獣医学科に在籍する学生の男女比は、3対2で女子がやや多くいました。昔、畜産などが主流であったころは男性が多かったそうですが、今のようにペットなどの小動物を扱う獣医師が増えるにつれて女性が増えたそうです。
獣医師の免許をもって就ける仕事には、動物病院のほかに公務員、保健所、農業関係団体などがあります。公務員ではまったく生き物に触れず、BSE(牛海綿状脳症)などについて仕事をする人もいます。
6年生になり、遠井さんは「小動物」に進むことを決めました。「小動物」ならば手に職をもって長く仕事が続けられると思ったからでした。
大学の研究室は「解剖」を選びました。研究室には、内科、外科、生理学、薬理、繁殖、基礎研究などがありましたが、「体の構造を知りたい」と思い、「解剖」に決めました。卒論のテーマは、犬の脳の中にある脊髄液に特定の酵素が含まれているかどうかを調べるというものでした。
獣医師としての毎日
公務員や企業に就職するには就職試験がありますが、「小動物」の場合は、基本的に自分で行きたいと思う動物病院を見つけます。今働いている動物病院に決めたのは、学生のときにこの病院から髄液をもらっていたことからでした。
獣医師として毎日、忙しい日々を送っています。主にペットの動物の治療ですが、外来患者の治療と入院患者の世話があります。手術もほぼ毎日のように行います。去勢手術や避妊手術から特殊な手術までいろいろあり、長いものでは3時間以上かかものもあります。
動物は口をきかないので、見て、触って痛みを感じ取ります。「こういう症状のときはこの間接に痛みがでる」といったことをある程度記憶しておき治療にあたります。レントゲン撮影や検査などでは出てこない症状もあります。
日々の仕事でよかったと感じるのは、動物が元気になったときです。反対に後悔することも毎日あります。同じ病気をずっと見ているわけでもないので「こうしておけばよかったのかな」と思うこともあります。
仕事内容に男女の差はありませんが、3年目くらいまでは飼い主の方に「こんな若いお姉ちゃんで大丈夫か」と見られたことがあり、悔しい思いもしました。
動物病院の獣医師は「人間相手の仕事」
「獣医だから動物だけ見ていればよいというわけではない。結局、話をするのは動物ではなく、飼い主である人間なので、人間相手の仕事だと思う」と遠井さんは言います。
またすべての病気を治せるわけではないので、患者さんからクレームや苦情もたくさんきます。そうしたことに対応できるよう精神的にタフであることも必要です。納得できる苦情は受け入れ、経験として積みあげていくことが獣医師としての成長にもつながるようです。
獣医師を希望する人に、遠井さんからは「毎日いろいろなことが起こるので、刺激や変化を楽しめる人には向いている仕事だと思います。また日々新しいことがたくさん出てくるので、絶えず勉強が必要です」とメッセージをいただきました。
(平成18年度インタビュー)