電力会社でエコロジカルな暮らしを提案
地球の温暖化やエネルギー問題に関心のある人も多いことでしょう。どうしたら、少しでも環境を配慮した建物や暮らし方ができるのか。将来、そうした仕事についてみたいと思っている人もいるかもしれません。織間さんは、省エネ・省コストの施設を設計し、エコロジカルな暮らし方を提案している建築・建設の専門家です。とはいっても、ゼネコンといわれるような建設会社で働いているわけではありません。東京電力というエネルギーを扱う会社で、自分の専門を生かしています。
自分の専門が生かせ、結婚・出産・子育しながら働ける職場を選ぶ
織間さんは、小さい頃から手先が器用で、もの作りや、絵で表現したりするのというのが好きでした。高校生の頃、建築デザインをしたいと思い、建築学科を選びました。最初は、デザインに興味がありましたが、だんだんと地球環境や自然の恵みをうまく取り入れた建築設計をやってみたくなり、大学院の修士課程まで、環境工学という、建築と省エネルギーをつなげる快適環境について学んできました。
就職となった時、織間さんは、2つ条件を満たす会社を探しました。ひとつはこれまで学んできた環境と建築をつなげられる仕事、もうひとつは、結婚・出産し、子育てしながら仕事を続けられる制度や環境が整備された会社でした。
学んだことを活かしたい思いに加え、小さい頃から自分で稼いで生きていく、結婚も子育ても仕事もしたいと思っていた織間さんは、すでに働いていた同期の女性たちから聞く働く女性の現状や、博士課程にいた女性の先輩の生き方を参考にしました。「最初から自分がやりたいことができるわけではない」、「仕事と家庭の両立がむずかしい」と知って、先の2つの条件で会社を探したのです。そこが、現在の会社でした。そして、結婚、出産し、働き続けています。
変電所の設計から始める
入社してすぐ担当になったのは、変電所の設計でした。規模や予算、実施設計、品質のチェックなどの仕事でした。それを3年ほどやった後、産休・育休をとって復帰しました。復帰後は、設備・環境工学の専門家として、事務所、建物のリニューアル計画に関わることになりました。省エネルギーモデルビルとしてリニューアルするための計画、設計、施工・工事監理の仕事をしたのです。より自分の専門に近い分野の仕事ができるようになったのは、半年に1度の上司面接で、自分がしたい仕事の希望を出してきたからでした。
主任になって、企画を手がける
千葉支店に移ってからは、会社関係施設の建物のリニューアルの企画から基本設計に関わり、自社ビルの空きスペースをファミリーレストランやコンビニ、介護施設、デイサービスなどに、借りてもらうような企画も立てました。その際、働く人、使う人が使いやすいよう、人の動き、温熱環境などを配慮しました。
事務所建物のエネルギー15%削減プロジェクト
また、2000年からは、会社が出した「エネルギー15%削減プロジェクト」にも参加しました。全社の事務所建物の電気と水の使用量を減らすという課題に、織間さんたちは、エネルギー使用の実態を調べ、省エネに向けて22項目のセルフチェックシートを作り、省エネを徹底することで、具体的にどのぐらいエネルギー消費とコストが削減できるかをデータでシュミレーションしました。その結果、社員の協力で、予想をはるかに超える28.2%もエネルギーが削減できたのです。
副長になって、「Switch! Station浦安」の実現
織間さんは、こうした経験を次の企画に展開していきました。2003年、オール電化のショールームである「Switch! Station浦安」を作りました。これはクーラーと暖房に頼りきった生活を見直し、太陽と風、緑を生かしたエコロジカルな住まいを体験できるオール電化のショールームです。断熱材を使って熱の出入りを少なくした部屋、太陽エネルギーの上手な利用、空気が自然に流れる工夫、敷地の緑の利用、地場産の木材を使った空間、省エネのための電化機器の利用などが工夫されています。このショールームの反響は大きく、研究者や大学のゼミの学生がたくさん見学にきました。
社内の女性ネットワーク
東京電力では女性のリーダーを育成しようとする研修を行っています。織間さんはその第1回目に参加し、そこで社内のいろいろな部門の女性たちと知り合うことができました。みな志が高くて、こうあるべきというようなことを話すことは楽しく、また会社が同じ方針を出していても、違う部門の人はこういう見方をしているとか、今この部門はこういう悩みを抱えているとか、そのような情報交換をするのに、とてもよいネットワークとなっているそうです。
自分が何をしたいかを考え続け、小さくても夢を持つことこそが大事
将来、何をしたいのか悩んでいる人に、織間さんは「今、無理やり決めなくてもいいのではないでしょうか。やりたいことを短期的に見つけるのではなく、長期的に考えて、その時々で、方向づけを行っていくことが大切です。」と話します。将来やりたいことを考え続けていることで、仕事の場面で実現できる時期を逃さず、やりたいことを実現することにつながっていくのではないでしょうか。
織間さんも入社したてのころは、自分の専門の仕事ではありませんでした。ですが、常に自分のやりたいことを会社の方向性の中で提案し、一つひとつ実現させてきています。そして、勉強し続けることも大事です。織間さんは、建築・建設の仕事に役立つ一級建築士や技術士などの資格も、結婚後、仕事や子育てをしながら取っています。大学や学部があなたの将来に結びつくのではなく、あなたがやりたいことを考え続けることこそが、実際の仕事で展開されていくのではないでしょうか。
(平成18年度インタビュー)