子育てを“Enjoy”できる環境づくり~母親を孤立させない子育て支援をめざして~松崎美穂子さん

子育てを“Enjoy”できる環境づくり~母親を孤立させない子育て支援をめざして~松崎美穂子さん
<プロフィール>
「子育て支援ネットワークとくしま」代表。徳島市の子育て支援総合コーディネーターなど行政のアドバイザーも多数兼務。結婚後徳島へ転居。子育ての相談先や遊び場などの情報がなかった経験から、1993年に任意団体「徳島子育てネットワークくすのき」を設立し、自前の情報提供活動を開始。2002年にNPO法人となりました。(40代)

※松崎美穂子さんの「崎」は正しくは「﨑」ですが、環境によって正しく表示されない可能性があるので、「崎」で表示しています。

松崎美穂子さんのこれまでと
生涯学習との関わり
短大卒業後、臨時として幼稚園に勤めた後、小学校の教員になる。
結婚して退職し、25歳のとき、徳島市に転居。乳幼児を抱え、社会との接点を失って悩む。
企業主催の育児サークルに参加したが、物足りなく、そこで知り合った仲間と育児サークルを結成。
子供の幼稚園入園に伴い、1993年、サークル活動を「徳島子育てネットワークくすのき」に発展解消。子育て情報誌の発行、県内の子育てサークルのネットワーク作りを開始。
2002年、活動をNPO法人化し、「子育て支援ネットワークとくしま」を設立。
NPO活動と両立できる仕事として、自宅で塾を開業。
子育てを“Enjoy”できる環境づくり~母親を孤立させない子育て支援をめざして~松崎美穂子さん
「子育て支援ネットワークとくしま」の活動

松崎さんが代表を務める「子育て支援ネットワークとくしま」は、子育てに関する情報提供活動をおこなう任意団体「徳島子育てネットワークくすのき」から発展してできたNPO法人です。
主な活動としては、任意団体の頃から続けている育児サークル支援や、子育てや遊び場などに関する情報提供活動があります。さらに、2003年には徳島市の委託を受けて商店街の空き店舗を利用した「子育てほっとスペース すきっぷ」をオープン。子育て真っ最中のメンバーがシフトを組み、数名のボランティアと共に保育に当たっています。乳幼児の親子がメインの場所は県内で初めてということで注目度も高く、利用者は1日平均50人前後(2004年当時)。
また、乳幼児の親子をメインにしつつも、「小学生部会」や「思春期部会」を設置したり、児童相談所や保育所などの専門家と連携したりして、さまざまな子育て相談に応じられるよう工夫を重ねています。

見知らぬ土地での子育てに悩む

松崎さんは奈良県出身。もともと子どもと関わる仕事に興味があり、短大時代にはYMCAの活動リーダーをしたり、青年団活動で手話サークルに参加したりもしました。短大卒業後は、臨時として幼稚園で働き、その後、小学校の教員に転職。やがて結婚を機に退職し、徳島市に移りました。
出産を迎え、慣れない土地で乳幼児の子育てを始めた松崎さんは、悩み始めました。「見知らぬ土地で、(略)夫の帰りだけを待ってる自分と、ギャップがあって。このままでは、子どもに笑顔とか、子どもに感動という前に、自分に笑顔が無くて、感動も無く、(略)赤ちゃんと向き合う生活の中で、これは違うなあと思って。」
幼稚園や保育所に行けばPTAを通じて社会との接点ができますが、初めて子育てをする人や県外から来た人は、乳幼児を抱えると何かと家にこもりがちになり、情報も入りにくくなります。子どもを連れて外へ出かけると、「こんな人ごみに赤ちゃんを連れてきて」という冷ややかな視線を受け、なかなか外出もできませんでした。社会との接点といえば、せいぜい新聞やチラシなど。
そんなとき、0才や1才の子でも連れて行ける企業主催のサークルを見つけて参加してみましたが、月2回の活動では物足りません。同じような意見の母親たちと出会った松崎さんは、「自分たちでもできるんじゃないか」と子育てサークルを結成。今でこそ国も支援をおこなっていますが、当時は、子育てサークルといえば「仕事をしてない母親が暇を持て余してやっている」というふうに見られていました。行政の支援も進んでいませんでしたが、逆に活動は活発だったといいます。

徳島の子育てを応援しよう

子どもが幼稚園にあがるときになって、サークルを解散するよりも、乳幼児の子育て支援のために何かできないかと考え始めました。そして、1993年に任意団体「徳島子育てネットワークくすのき」を結成しました。
主な活動のひとつは、『Enjoy!ママ』という地域に密着した子育て情報誌の発行。転勤で越してきて、子育てサークルに新しく参加する人から、徳島の子育て支援施設や情報が遅れているという不満はよく聞いていました。そこで、徳島の良さを知ってもらうために、子育てサークルの一覧表や、親子で行ける遊び場やお店、施設などを紹介しました。確かな情報、当事者ならではの情報を伝えようと、子どもと一緒に取材もしました。
もうひとつは、県内の約60の子育てサークルのネットワーク作り。3名ほどが中核となって事務局を運営しました。いずれも「お母さんたちにとって、自分たちにとって、こういう支援があればいいなあという、必要とされるものをどんどん事業化していった」のだといいます。

任意団体からNPOへ

当初、NPO法人化にはあまり熱心ではありませんでした。順調にいっていればNPOにはせず、緩やかに活動したかったといいます。勉強会にも行ってみましたが、税金を払うことや、事務処理の煩雑さに、メンバーも及び腰でした。ただ、自分たちが苦労して集めた情報が、ボランティア団体だからということで、当前のように無料提供を迫られたり、無断で使われたりすることに疑問を感じるようになっていました。
ところが、社会的評価も高まり、本の売り上げが伸びたり、徳島新聞社の社会賞をもらったりするようになって、メンバー間で考え方の違いが表面化。解散を希望する意見も出て、急に法人化が現実味を帯びてきました。
多くの人に助けられてやってきた活動を何とか残したいとの思いから、ついにグループ名の変更を決心。NPO法人とは何かもよく理解しきれないまま、申請手続きに奔走することになりました。
こうして2002年に「子育て支援ネットワークとくしま」を設立。2003年には市の協力を得て「子育てほっとスペース すきっぷ」をオープンしました。活動開始から11年目にして初めて手に入れた拠点です。いつでも起こりうる母親の悩みに備えて、誰もが気軽に集まることのできる場所を作りたいという思いが、実現に結びつきました。

悩みを”Enjoy”に変えるために

さまざまな生涯学習の場にも参加してきましたが、最も心に響いてくるのは、子育てに悩む人たちの生の声だといいます。「この活動を通してたくさんの悩みを持たれているお母さんと出会ったことが一番大きな勉強ですねえ。(略)大きな実例が目の前に絶えず飛び込んでくるというか。」
実際、自宅には普段からさまざまな相談が持ち込まれます。自分は専門家でもないのに、と思いながらも、自分自身が見知らぬ土地で仲間に助けられたという経験から、やはり見過ごしにはできません。
活動を続けるコツは、子どもとゆったり関わる時間をとり、”Enjoy”する気持ちを失わないこと。自分も楽しみながら、子育て”Enjoy”できる環境を、親と子どもが生き生きと触れ合える場を、徳島でのタイムリーな子育て情報を、これからももっと提供していきたい。そんな意気込みにあふれる松崎さんです。

(平成16年度インタビュー、平成18年度修正)

一覧に戻る

ページトップへ

女性情報ポータルWinet
  • 国立女性教育会館 女性教育情報センター

  • 〒355-0292 埼玉県比企郡嵐山町菅谷728/

    tel: 0493-62-6195/mail:infodiv@ml.nwec.go.jp