歴史ある町で新しいライフスタイルを提案~仕事・活動の両面から自分を磨く~竹本加良子さん

歴史ある町で新しいライフスタイルを提案~仕事・活動の両面から自分を磨く~竹本加良子さん
<プロフィール>
福井県・越前市(旧武生市)の中心街のまちづくりを中心に活動するNPO法人「ラピュタ創造研究所」理事長。事務職、宝石販売、印刷会社のオペレーターを経て、フリーの印刷技術者に。現在は、市民活動が縁で仕事を請け負ってきた会社の役員。「ラピュタ」設立からのメンバーで、NPO法人になったのをきっかけに理事長に就任しました。(40代)
竹本加良子さんのこれまでと
生涯学習との関わり
高校卒業後、4年間、近くの工場に事務員として勤務。
自分の可能性を試すために退職。4年間、宝石販売を手がけた後、何か技術を身につけようと印刷会社に転職。
同じ頃、友人の影響もあって、市民活動に興味をもち始め、自主的な学習会や、県の生涯学習センターなどの講座に積極的に参加。
印刷会社で版下オペレーターとして8年間勤務。その間、市民団体主催の「七夕祭り」に参加し、実行委員会メンバーとなる。
市民活動を通じて、コンサルタント会社を営む井上さんと知り合い、アルバイトを引き受ける。
35歳になり、両親の扶養をふまえて時間に融通のきく働き方を模索。印刷会社を退職し、独立。
1年間フリーとして働いた後、井上さんの会社で能力が認められ、出資して役員に就任。
1999年、まちづくりのために仲間とグループ「ラピュタ」を設立。
2002年にグループ名を「ラピュタ創造研究所」に改称。2003年にNPO法人となる。
歴史ある町で新しいライフスタイルを提案~仕事・活動の両面から自分を磨く~竹本加良子さん
ラピュタ創造研究所について

福井県・越前市は、大化の改新の頃から国府として栄え、多くの由緒ある神社仏閣がある街です。市の中心地「蔵の辻」には22の蔵が集まっており、歴史を感じさせる趣があります。この「蔵の辻」の一角に、竹本さんが理事長をつとめるNPO法人「ラピュタ創造研究所」の事務所と工房があり、まちづくりのNPOとして活動しています。
設立のきっかけは、「蔵の辻」にあった大きなビル建設計画がバブル崩壊によって中止となり、代わって、蔵の景観を重視した建物による町並みにしようという協定が結ばれたことでした。「蔵の辻」の一角に住みITを活用したコンサルタント業を営んでいた井上和治さん(ラピュタ理事)は、まちづくりのために何かしようと友人たちに呼びかけ、竹本さんを含めた20〜40代の7人で、1999年に「蔵の辻」の一角に任意団体「ラピュタ」を設立。新しい時代の武生の街中ならではの暮らし方を提案する活動を始めました。
グループは2002年に名称を「ラピュタ創造研究所」と改め、その翌年、行政と協働し、より効果的に活動を展開していくため、NPO法人となりました。

活動の内容

ラピュタ創造研究所の活動は、まちづくり事業、生活文化事業、コミュニティビジネス支援事業などを主な柱としています。いずれも地域に密着したユニークな内容を持っているものばかりです。
たとえば、「蔵の辻マップ」発行などのまちづくり情報発信事業、武生市生まれの絵本作家「いわさきちひろ」事業。新しいライフスタイルの提案を目的とした個展やグループ発表などへのラピュタスペースの提供や、地元の陶芸家、画家、音楽家への貸しギャラリーの提供といったスペースの活用事業。ミニFMラジオ実験放送や、着物を着て武生の町屋でライブを楽しむ「きものde来武」などもあります。
また、武生での暮らしを考えてもらうために開いている「季節を感じる会」や、毎月1回開催されている「ラピュタ de 茶論」は、興味のある人が気軽に参加できるイベントです。「蔵の辻」の一角にある「ラピュタ工房」は、そうした講座等を開催したり事務をとったりする場所として利用されています。
とはいえ、設立当初は収益もあがらず、「自分たちの好きでやっている」と地域の理解もなかなか得られませんでした。しかし、約2年間、近所の約200軒に月1回広報誌を配り続けるといった地道な活動が実を結び、活動に興味を持つ人が増え、ギャラリーに足を運ぶ人も出てくるようになりました。
それでも、地域との関係、活動の経済的自立、新人の育成など、まだまだ課題はたくさんあるといいます。

自分を磨ける場を模索して

竹本さんは、福井県・武生市(現越前市)生まれ。高校を卒業後、近くの工場で4年間事務員として働きましたが、自の仕事が自分のやりたいことではないことに気づき、再び軌道修正。自分を見つめ直し、何か技術を身につけようと考え、武生市に戻って印刷会社に就職。版下オペレーターとして8年間勤め、版下作成の技術を身につけました。
その一方で竹本さんは、20代の頃から市民活動にも興味を持っていました。友人の強い影響もあって、東チモール問題、アイヌ民族問題、原子力発電所の問題など、多く勉強会や生涯学習講座に参加。他者との関わりによって、自分の暮らしが成り立っていることに気づき、社会に対する問題意識を高めていきました。
初めて具体的な市民活動に参加したのは、今から13年ほど前のこと。武生市で活動していた飛行機からの農薬散布に反対する会が主催した「七夕祭り」を見て、自分なりの問題提起や表現をしてみたいと思った竹本さん。翌年には七夕祭りの実行委員となり、やがて正式に入会して本格的に活動を始めました。
この会の活動の中で、竹本さんは、後に一緒にラピュタを立ち上げる仲間となる井上さんと出会い、印刷会社で働きながら、井上さんの会社でもアルバイトをするようになりました。

フリーとして独立

竹本さんは、精神的にも経済的にも自立した女性の生き方を意識してきましたが、35歳になったとき、高齢になった両親を扶養することをふまえ、もっと時間的に融通の利く働き方をと考えて、一大決心をしました。
印刷会社をやめて、独立。年齢的にも、新しい生き方を選択する最後のチャンスになるかもしれないという思いもありました。
独立後1年間くらいはフリーとして、主に井上さんの会社の仕事を請け負っていましたが、その後、竹本さんの能力が評価され、井上さんに会社の役員に誘われ、出資をして役員に就任。現在でも、会社では版下作成などの仕事を続けており、「ラピュタ工房」では、自分の持っている技術を人に教えて役立てています。

学んだことを活かす

現在、竹本さんは、仕事とNPO活動の2つの車輪を回す、大変なハードな毎日を送っています。24時間のうち、仕事に11時間、NPOに3時間費やしています。個人の時間は残りの10時間ですが、これには睡眠や食事の時間も含まれています。精神的には満足しているけれど、今後はもう少し余裕を持って、自分の時間も大切にしたいといいます。
竹本さんは、これまで多くの生涯学習に参加し、多くのことを学ぶと同時に、学んだことを形にするためにも多くのエネルギーを割いてきました。そして、活動の中から、また新たな学びへと向かっていきました。
熱心に学ぶ一方で、吸収したことを多くの人に向けて表現する場を確保することに努めてきた竹本さん。これからも「蔵の辻」で新しい活躍の場を広げていくことでしょう。

(平成16年度インタビュー、平成18年度修正)

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